ハウスで利用する場合の留意事項

ハウスの大きさと適正群数

ミツバチにうまく働いてもらうには、ハウスの面積やハウス内の花の量に見合った規模の巣箱(蜂群)を置くことが重要です。ミツバチが多すぎると、群を維持、増殖するためのエサが不足し、ミツバチの減少の原因となります。ミツバチをたくさんハウス内に入れても受粉率が高まらないのはそのためです。適正な蜂群数は、たとえばイチゴの場合、10aあたり1群(6000〜8000匹)と言われています。大型の連棟ハウスの場合には2群、3群と複数設置することもあります。

どこに置くのがよいか?

温度差が大きいところ、湿度の高いところを避け、環境変化の少ない場所を選びます。長時間日光が当たるところは巣内の温度が上がりすぎてよくありません。

ハウス内の景色は単調で、どの方角を見ても似ていることから、台座を設けるなどして、ミツバチによく見えるようにします。

ハウス内で転々と巣箱の位置を変えると、新しい巣箱の場所に戻れないミツバチがでてしまいます。設置場所の選定には、あらかじめ作業に支障がなくミツバチにも分かりやすい場所を検討しておきましょう。

適切な巣箱の位置の目安

巣門(巣箱の出入口)は、なるべく太陽に向けます。また、花の高さか、それより少し高い位置で、目立つように置きます。作物の草姿によって、巣箱を目立たせる工夫が必要です。

暑い季節や地方では

暑い季節や地方では、巣箱内の過度な温度上昇を避けるため、[ミツバチの管理マニュアル – ナス]の写真のように、巣箱をハウスの外側に出して設置する方法が有効な場合もあります。

導入時の注意事項

導入時期が早すぎる(花がまだない)と、ミツバチは消耗するだけなので、開花時期に合わせます。蜂群が届いたら、輸送中の振動で興奮しているので、10分程度静置してから巣門を開け、落ち着いた状態で、巣の位置や周辺環境を学習させます。
ミツバチは、紫外線が見える代わりに、赤は色としては見えません。ハウスの被覆材に紫外線カットフィルムを用いると、うまく飛べなくなることがあるのは、普段頼りにしている紫外線が使えなくなってしまうからです。

温度管理

ハウス内の温度が30℃以上になると巣箱内の温度が高くなりすぎ、危険な状態となります

ハウス内の温度が30℃以上になると巣箱内の温度が高くなりすぎ、危険な状態となります

ミツバチは巣の中心部の温度を33〜34℃に維持します。日較差の大きいハウス内に置かれたミツバチは、夜間は暖房、日中は冷房のための行動をとります。

訪花活動は気温20〜25℃で盛んになりますが、それ以上にハウス内の気温が高くなっても、訪花するミツバチの数は増えません。

農薬の使用

日除けの工夫例。結露による水滴のボタ落ちから巣箱を守る効果もあります

日除けの工夫例。結露による水滴のボタ落ちから巣箱を守る効果もあります

ミツバチに対する毒性が低い農薬でも、訪花行動に影響が出ることがあり、長期的には栽培に影響が出ることもあります。ミツバチに対する影響が低い農薬を選ぶとともに、散布時は必ず散布前日の日没後にハウスの外に出します。殺菌剤であっても同様と考えてください。

この間は巣箱の中が高温にならないよう、巣門などからの換気に気をつけ、戻すときには、ミツバチに対する安全日数を確認のうえ、できる限り余裕をみて、必ず元の場所に置きましょう。

刺されないための注意

ミツバチは針をもち、刺すことがあります。ミツバチ自体はもちろん、巣箱に刺激を与えた時も攻撃されやすくなります。そのような場合にそなえて、必ず髪の毛を被う帽子をかぶってください。長袖シャツの着用、ズボンの裾を絞る、などにも気をつけます。

攻撃されたときは手でミツバチをたたいたりせず、そこから逃げてください。万一刺されてしまった場合は、必要に応じて医師の診断を受けるようにしてください。

利用後の処分

買い取り巣箱の場合は、利用期間の終了後、ミツバチが残っているいないにかかわらず、伝染病の感染源となるのを防ぐ目的で、必ず焼却処分します。リースミツバチの場合はそれぞれの養蜂家にお任せください。