ナス
ナスの花は花蜜がない
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花粉は葯先端のこの穴から震動によって出てきます
ナスの花は花蜜がないため、ミツバチが花から得られるエサ資源は花粉だけです。そのためミツバチにとっての魅力は低く、競合する他の花がある露地栽培ではミツバチの利用は望めません。
しかしハウス内では、砂糖水(場合によっては代用花粉)の給餌を適切に行いさえすれば、長期にわたり受粉を任せることができます。
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ミツバチはナスの筒状の葯(やく)の下にしがみついて、前肢と口器を使って葯の先端を動かすことによって花粉を出させ、落とした花粉を腹部で受け止めるようにして花粉を集めます
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長い葯に囲まれるようにして雌しべがあります
栽培規模と導入群数
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ナスの草丈が伸び、軒を超えるようになると、ミツバチの棟から棟への移動が困難になる場合があります
設置する群数の目安は5〜10 aに1群とします。ただし連棟のパイプハウスなど、天井が低くてナスの草丈が高い場合には、棟から棟へのミツバチの移動が妨げられることがありますので、ミツバチが移動できるスペースを工夫したり、群数を増やすなどの対応が必要となります。
巣箱設置時の留意点
枝葉が繁茂すると、畝間に置いた巣箱は見つけづらくなります。巣箱はハウスの端に置き、周辺にはナスを植えないようにして、巣箱を見つけやすくしてやることが大切です。ハウスの中央部に置く場合は、ミツバチが飛び交う株より少し高い位置に、青か黄色の看板などの目印を置きます。ミツバチは暑さに弱いので、とくに冬以外では、日除けや風通しにも留意します。
利用時期ごとの注意点
冬期
花粉の生産量が少なく、花を指でたたいて花粉の落下が目視できないような状況では、ミツバチを放飼してもなかなか訪花しません。一方、果実生産の面からも、花粉が足りなかったり発芽力が低いと、奇形果の発生も多くなります。ミツバチの訪花と受精の両面から、品種特性に合った温度確保が大切となります。
高温期
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ハウスの外に設置することで、ハウス内の高温を回避することができますが、ハウス内のミツバチの訪花状況に注意する必要があります
夏など高温下のハウスでミツバチを利用する場合は、ミツバチのために水場を設置してあげます。ミツバチは巣内の冷却のために、水を運び込んで、気化熱を利用するからです。
高温になったハウス内でミツバチを守る方法として、巣箱を温度が低いハウス外に設置する方法などもありますが、季節や環境により効果が違いますので、養蜂家などのアドバイスや経験が必要となります。
給餌は必須
ナスの花には花蜜がありません。導入時に持っていた貯蜜がなくなると、ミツバチは餓死してしまいますので、ミツバチに給餌を行わなければなりません。借り入れた養蜂家、もしくは購入したメーカーの指示に従って、必ず砂糖水などの給餌を行ってください(ただしハチミツは与えないでください)。花が少ない時期には、代用花粉の給餌も有効です。