ミツバチの種類
世界のミツバチと日本のミツバチ
社会性ハチ類の中でも、たとえばマルハナバチが世界に500種いるのに対し、ミツバチは9種しかいません。セイヨウミツバチ(産業養蜂種として、日本を含む世界中に導入されている)とトウヨウミツバチ(ニホンミツバチはその1亜種)は、洋の東西で、それぞれ熱帯から寒地までの広域に分布し、その他のオオミツバチ、コミツバチなど7種は、いずれもアジアの熱帯域に極地的に生息しているにすぎません。
日本には、飼養状態下のセイヨウミツバチと在来(野生)種のニホンミツバチの2種がおり、近年、後者がその生息数を大幅に増加させています。アフリカから欧州にかけて26亜種からなるセイヨウミツバチのうち、日本に導入されたものはイタリア系のApis mellifera ligusticaとされます。しかし、アメリカで200年飼われた後に日本に導入され、その後も様々な別亜種の血が混じり、血統的にも環境適応的にも、元亜種のそれとはかなり違った性質となっています。
イタリアン
性質は非常に穏やかで、集蜜力が高く、分蜂性が低いため世界中の養蜂家の聞で最もよく利用されているミツバチです。分類学上はセイヨウミツバチのー亜種 Apis mellifera ligusticaに分類されています。
日本で飼育するには、他の系統と比べると、越冬中も大きな群で維持する必要があり、また冬季でも産卵する傾向があるため十分な貯蜜が必要です。体色は明るい黄~橙色と黒色の縞模様をしています。
イタリアンは、日本の気候に適していたことから、明治時代にアメリカやイタリアから、大正時代にはイギリスからも輸入していました。現在は、主にオーストラリアからスリーバンド系統が輸入されています。
- スターライン
イタリアン同士の雑種で集蜜性および蜂児生産性が高いと言われていますが、1代雑種(F1*)のため、次世代の女王蜂には、同等の能力は期待できないので使用には注意が必要です。
(F1雑種とは、純系同士を交配し、両方の良い形貨が発現するようにした子ども世代の個体のことです。) - スリーバンド(三条)
イタリアンから選抜された系統で、日本では三条と呼ばれています。オーストラリアから輸入されている女王蜂は、この系統であると言われています。 - コルドバン
イタリアンから選抜された系統です。イタリアンに比べてわずかに大人しいと言われています。体色には黒色の縞模様がなく、頭部や脚の体色が薄茶色であるのが特徴です。
カーニオラン
中央・東ヨーロッパ(オーストリア、スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴピナ、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア)に分布し、セイヨウミツバチのー亜種Apis mellifera carnica Pollmann に分類されます。名前は分布の中心地であるスロベニアのカルニオラ地方に由来します。
イタリアンに比べて性質は温和であり、夜間や低温時に巣箱を聞けても大人しい傾向があります。集蜜性が高く、また、低温耐性も高いので、越冬はイタリアンより小群で行うことができますが、夏場の高温には弱い傾向があります。当初は分蜂性が高いと言われていたようですが、現在は改良が進んでいるようです。
働き蜂の体長は、イタリアンに比べて大きく、また舌の長さも長いため蜜腺が長い花からも採蜜することができます。体色は灰から茶色と黒色の縞模様で被毛は白色で、欧州では蜜蓋が白色で見た目が美しいため、巣蜜販売用に良く利用されています。
コーカシアン
ロシアのコーカサス地方を原産地としているセイヨウミツバチのー亜種Apis mellifera caucasia Pollmann です。特徴としては、ふそ病やヘギイタダニなどの病害虫に対して他のセイヨウミツバチよりも抵抗性が高いと言われています。働き蜂の体長は、カーニオランよりは小さく、イタリアンに比べると大きく、舌はカーニオランよりも長いのでシロツメクサなどの蜜槽の深い花からも採蜜することができます。体色は薄灰色と黒色の縞模様が特徴です。過去に日本で飼育された記録では、産卵開始が遅く、産卵数も他の2亜種と比べて少なく、またプロポリスを多く集める傾向が見られるようです。ただし国内では現在飼養されていません。
- ミッドナイト
コーカシアンから選抜された系統同士の雑種で、集蜜性および蜂児生産性がコーカシアンよりも高いと言われていますが、1代雑種のため次世代の女王蜂には、同等の能力は期待できないようです。 - ロシアン
沿海州のハバロフスク(プリモルスキ-)地方原産のコーカシア群のことを指します。古くからミツバチヘギイタダニに抵抗性が高いことが知られています。女王蜂や働き蜂は巣板上を動きまわり、落ち着きがないので扱いにくいと言われていましたが、改良が進んで現在は大人しくなっているようです。アメリカでは、ミツバチヘギイタダニからの被害を低減させるため、2000年から隔離した島で増殖した個体の導入試験が進められています。
ふくおかハイクイーン(過去に日本で作出された系統)
福岡県畜産研究所で開発が試みられたセイヨウミツバチのイタリアンを基本とした系統でふくおかハイクイーンと名付けられました。アメリカから輸入した系統と福岡県畜産研究所で維持していた優良系統とを隔離交配し、産卵数や耐病性が高く、温和な群を作出し、集蜜力を高めることに成功しています。1990年代はじめに、未交尾女王蜂を配布していましたが、現在では生産されていません。