ミツバチと花のパートナーシップ
ミツバチは花なしには生きられない
花もポリネーターなしには種子をつくれない
植物は太陽光のエネルギーを糖質に変え、その一部を蜜腺から分泌してミツバチに提供します。これはミツバチの栄養、さらには飛行や巣内の暖房用燃料、巣の材料となります。花粉もミツバチにとっては貴重な食料であり、これらを集めるための訪花活動の結果が、花にとっては受粉となるわけです。
ミツバチが花から受け取る栄養は?


巣房内に貯められたハチミツと花粉(ハチパン)
ミツバチをはじめとするハナバチ類は、いずれもその栄養源のすべてを花蜜と花粉に頼っています。花蜜はハチミツとして、花粉はハチパンとして巣に蓄えられます。ハチミツはそのほとんどが糖質でエネルギー源となり、その他のすべての栄養素は花粉から得ています。
「子育て」のために働くミツバチだからたくさんの花を訪れる
ミツバチのように巣を作る社会性昆虫は、自分が食べるだけでなく、巣で待っている他のメンバーや幼虫が食べる分も巣に持ち帰ります。体重100mg弱のミツバチが運べる花蜜と花粉の量は、 20〜40mgの花蜜(蜜胃の中に貯めて)と15 〜30mgの花粉(2 本の後ろ肢に付ける分を合わせて)です。巣箱に持ち帰った花蜜や花粉は、いったん貯蔵され、ハチミツやローヤルゼリーのようなミルクに加工されて、全員の共同の食べ物となります。

腹部を引き離して蜜胃を露出させている。後ろ肢についているのはイチゴの花粉ダンゴ

イチゴハウスへの導入後1ヶ月経った巣板の様子。イチゴの花粉が貯蔵されている巣房も散見されます(ここでは巣板が見えるように蜂は一部取り除いてあります)。青:花粉が貯蔵されているエリア、黄:育児をしているエリア
ポリネーター(花粉交配)に適した性質

花粉をダンゴにするための圧縮器(上)と、後ろ肢のバスケット内で大きくなっていく花粉ダンゴ(下)
ミツバチは花蜜と花粉を花から集める代わりに、 花粉の媒介をして、植物の再生産を助けています。いわば花に依存したミツバチの生命活動は、農業生産の現場において、今や欠かせない存在になってきています。
ミツバチのポリネーターとしてのメリットは以下のとおりです。
- 利用する花の種類がきわめて広いこと
- ほとんどの作物の受粉に使えること
- 簡単に運べる機動性にすぐれていること
- 適切に管理すれば長期間使えること
いま、ポリネーター環境が大きく変化している!

カリフォルニアの農地(上)と熊本県のハウス地帯(下)の比較。ともに上空3,000mから
いま、地球規模で生物多様性の減少が問題となっていますが、ポリネーターについても事情は深刻です。効率のよい農業生産のためには、広大な農地が適していますが、そのような環境では、ミツバチのような人工的なポリネーターの導入なしでは花粉媒介は成り立ちません。日本では、農地の単位が小さく、まわりに森や林があり、ハナバチや、ハエ、アブ、チョウなど自然のポリネーターたちが畑を訪れて、知らない間に受粉をしてくれていましたが、今では自然のポリネーターが減り、ハウスに限らず、ミツバチなどの導入に頼らざるをえない状況になってきています。